不動産会社のM&Aを検討する際、最も重要かつ複雑なのが宅建業免許の取り扱いです。後継者問題やシナジー追求でM&Aを選ぶ宅建業者は増えていますが、スキーム選択を誤ると免許を失効させ事業停止に陥るリスクもあります。
実は、M&Aのスキームによって宅建業免許の承継可否は大きく異なります。本記事では、不動産会社M&Aにおける宅建業免許の取り扱いを、4つのスキーム別に整理し、宅建免許専門の行政書士が2026年最新ルールで解説します。
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【最重要】M&Aスキーム別|宅建業免許の承継可否一覧

宅建業免許は宅地建物取引業法第3条に基づき、法人格に紐づいて付与されるため、M&Aスキームによって取り扱いが大きく異なります。
| M&Aスキーム | 法人格 | 宅建業免許 | 必要な手続き |
|---|---|---|---|
| 株式譲渡 | 同じ法人が継続 | ⭕ そのまま継続 | 役員変更等の変更届のみ |
| 事業譲渡 | 譲受側は別法人 | ❌ 承継不可 | 譲受側で新規取得 |
| 吸収合併(消滅) | 消滅会社の法人格は消滅 | ❌ 承継不可 | 存続会社で新規取得 |
| 会社分割 | 承継会社は別法人 | ❌ 原則承継不可 | 承継会社で新規取得 |
⚠️ 「吸収合併なら存続会社が免許を引き継げる」は誤りです。建設業法と違い、宅建業法には合併承継の規定がありません。合併・事業譲渡・会社分割いずれの場合も、宅建業免許は承継できず、新規取得が必要です。
結論:宅建業免許を維持したいなら「株式譲渡」が鉄則
法人格が同一のまま株主だけが変わる株式譲渡は、宅建業免許がそのまま継続するため、M&A後の事業継続がもっともスムーズです。中小不動産会社のM&Aで株式譲渡が選ばれる最大の理由がこれです。
株式譲渡の場合|免許継続のために必要な変更届
株式譲渡では宅建業免許がそのまま継続しますが、それで完全に手続きが不要というわけではありません。次のような変更があった場合、事実発生日から30日以内に変更届を提出する必要があります。
主な変更届が必要なケース
- 代表取締役・役員の交代
- 商号(社名)の変更
- 本店所在地・支店所在地の変更
- 政令使用人の変更
- 専任の宅地建物取引士の交代
これらの届出を怠ると、行政指導や処分の対象になります。M&A実行と同時に複数の変更が一気に発生することが多いため、漏れなく届け出る体制が必要です。
事業譲渡・合併・会社分割の場合|新規免許取得のスケジュール
事業譲渡・合併・会社分割では譲受会社が新規に宅建業免許を取得する必要があります。営業を中断させないためには、綿密なスケジュール管理が不可欠です。
新規免許取得の標準スケジュール
| ステップ | 期間目安 |
|---|---|
| ① 事務所確保・要件チェック | 1〜2週間 |
| ② 法人設立・体制整備 | 2〜4週間 |
| ③ 必要書類準備・申請書作成 | 1〜2週間 |
| ④ 都道府県知事 or 国土交通大臣へ申請 | — |
| ⑤ 審査期間 | 約30〜60日 |
| ⑥ 免許通知後、保証協会加入または営業保証金供託 | 2〜4週間 |
| 合計 | 約2〜3か月 |
重要:M&Aクロージング日と免許交付日の調整
譲渡側(消滅側)の宅建業免許は、合併や事業譲渡のクロージングと同時に効力を失います。譲受側の免許交付が間に合わないと、その間は宅建業の営業ができなくなるため、
- M&Aのクロージング日を新規免許の交付に合わせる
- または、譲受側で先に新規免許を取得してからM&Aを実行する
など、専門家との連携で綿密なスケジュール調整が不可欠です。
🔗 関連記事: ・宅建免許申請の流れと書類準備:完全ガイド ・「国土交通大臣免許」と「都道府県知事免許」の取得方法とその違い
デューデリジェンス時に確認すべき宅建業特有のチェックポイント
不動産会社のM&Aでは、通常のDD項目に加えて、宅建業特有のチェックポイントを必ず確認しましょう。
① 欠格事由の有無(最重要)
買収後に欠格事由該当者が役員として残っていると、免許取消しのリスクがあります。確認すべき欠格事由には次のものがあります。
- 過去5年以内の宅建業法違反による免許取消
- 禁錮以上の刑(または特定の罰金刑)の執行終了から5年未満
- 破産手続開始決定を受け復権を得ていない
- 心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの
⚠️ よくある誤解:「成年被後見人・被保佐人は欠格事由」 → 令和元年(2019年)の改正により削除済み。現在の欠格事由は上記のとおりに更新されています。
② 専任の宅地建物取引士の継続配置
宅建業者は事務所ごとに業務に従事する者5名につき1名以上の専任宅建士を配置する義務があります(宅建業法第31条の3)。M&Aに伴う退職・配置転換で基準を下回ると、2週間以内に補充が必要です。
🔗 関連記事:宅建業における専任の宅建士の重要性:設置義務と注意点
③ 保証協会の加入状況
宅建業者は、保証協会((公社)全国宅地建物取引業保証協会(ハト) または (公社)不動産保証協会(ウサギ))への加入、もしくは営業保証金(本店1,000万円、支店ごと500万円)の供託が義務です。M&A後の状況に応じて、
- 株式譲渡:そのまま継続(代表者等の変更届を保証協会にも提出)
- 事業譲渡・合併・会社分割:譲受側で新規加入
④ 事務所要件の継続性
M&A後に本店移転や事務所統合を行う場合、移転先が宅建業法上の事務所要件を満たすか事前確認が必要です(独立性、応接スペース、標識掲示など)。
⑤ 過去の行政処分歴・係争中の取引
業務停止処分歴、未解決のクレーム・訴訟は買収後に承継するリスクがあります。買収価格にも影響する重要な確認事項です。
⑥ 免許の有効期限(5年ごと更新)
買収対象会社の免許更新時期がM&A実行直後に到来する場合、更新手続きを先行させるか、M&Aスケジュールと調整する必要があります。
M&A後の維持管理|免許を失効させないために
M&A完了後も、継続的な法令遵守体制の整備が必要です。
主な維持管理項目
- 役員・専任宅建士・政令使用人の変更時の変更届(30日以内)
- 事務所変更・支店設置時の手続き
- 5年ごとの免許更新(有効期限の90日前〜30日前に申請)
- 保証協会への定期報告
- 帳簿・書類の保存
特にM&A直後は組織改編が多発するため、変更届の漏れが起きやすい時期です。専門家のチェックを定期的に受けるのが安全です。
🔗 関連記事:専任の宅地建物取引士が転職や退職した場合の手続きと注意点
不動産M&Aで宅建業免許を専門家に依頼するメリット
不動産M&Aの宅建業免許対応は、
- M&Aスキーム別の正確な判断
- スケジュール調整(営業ブランクの最小化)
- 変更届・新規免許申請の手続き
- 保証協会との調整
- DD段階での宅建業特有のチェック
など、専門領域が広く、判断ミスのリスクが大きい領域です。宅建業免許専門の行政書士に依頼すれば、これらをワンストップで対応でき、M&A仲介会社・弁護士・税理士・司法書士と連携した万全の体制で進められます。
まとめ:M&Aスキーム選択が宅建業免許の運命を決める
不動産会社のM&Aで宅建業免許をスムーズに維持するためのポイントは、
- 株式譲渡が最も簡単:法人格そのまま、免許継続、変更届のみで対応
- 事業譲渡・合併・会社分割は新規取得:免許承継不可、約2〜3か月のスケジュール
- DD段階で宅建業特有のチェック(欠格事由、専任宅建士、保証協会、事務所要件)が必要
- 令和元年改正で成年被後見人・被保佐人は欠格事由から削除
- M&A後も変更届・5年更新の管理を継続
スキーム選択を間違えると、買収後に営業停止やDDのやり直しという深刻な事態に発展しかねません。M&Aの計画段階から宅建業免許専門の行政書士を巻き込むことが、成功への最短ルートです。
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