建設業を営む企業が宅建業(宅地建物取引業)を兼業することは、ワンストップサービスの提供や収益源の多様化につながる大きなチャンスです。一方で、建設業法と宅地建物取引業法の双方を理解し、特に「専任技術者と専任宅建士の兼任ルール」を正しく押さえる必要があります。
本記事では、建設業者が宅建業免許を取得する際のメリット、手続き、注意点、そして実務でつまずきやすい兼任ルールを、宅建免許専門の行政書士が2026年最新ルールで解説します。
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建設業者が宅建業を兼業する3つのメリット

① 事業領域の拡大と収益源の多様化
建設業で培った技術・実績・協力会社ネットワークは、不動産取引の現場でも強力な武器になります。土地仕入れ → 設計・建築 → 販売・仲介 → リフォーム・管理までをワンストップで提供できれば、
- 顧客にとっての価値が高まる
- 中間マージンの削減で利益率が向上する
- 仲介手数料・売買益という新たな収益源を確保できる
など、企業全体の収益基盤を強化できます。
② 既存顧客・情報資産のシナジー効果
建設事業の顧客に対して売却・購入・賃貸の提案ができ、逆に不動産仲介で出会った顧客にリフォームや新築の話を持ちかけることもできます。広告宣伝費を抑えながら案件創出ができるのは、兼業ならではの強みです。建設現場で得る地域開発情報と、不動産仲介で得る相場・物件情報を統合できれば、市場分析の精度も飛躍的に上がります。
③ 自社施工物件の自社販売による利益率向上
自社で建てた新築・リフォーム物件を、自社の宅建業部門で直接販売・仲介すれば、仲介手数料が社内で完結します。販売リードタイムの短縮や在庫リスクの低減にもつながります。
宅建業免許取得の基本要件と手続き
「人員」と「場所」の2大要件
宅建業免許を取得するには、(1)人員要件と(2)事務所要件を満たす必要があります。
(1) 人員要件:専任の宅地建物取引士の設置
宅建業者は、事務所ごとに業務に従事する者5名につき1名以上の専任の宅地建物取引士を配置しなければなりません(宅建業法第31条の3)。
ここで重要なのが「専任」の意味です。
❌ 誤解:「専任=非常勤」 ✅ 正解:「専任」とは、その事務所に常勤し(常勤性)、かつ宅建業に専ら従事する状態(専従性)の両方を満たすこと
つまり、専任宅建士は 「常勤」かつ「専従」 の取引士でなければなりません。
(2) 事務所要件
宅建業の事務所には、
- 独立した区画(他事業と明確に区分されたスペース)
- 継続的に業務を行える設備(机・椅子・電話・鍵付き収納など)
- 来客応対・重要事項説明ができる応接スペース
- 専任宅建士の常駐
が求められます。建設業の事務所をそのまま使う場合でも、宅建業スペースをパーテーションなどで明確に区分する必要があります。
🔗 関連記事: ・宅建業における専任の宅建士の重要性:設置義務と注意点 ・宅建取引士の出向と常勤性・専任性:専任取引士とは?
【最重要】建設業の専任技術者と宅建業の専任宅建士の兼任ルール
建設業者が宅建業を始めるときに、もっとも質問が多いのがこのテーマです。
原則:別の事務所・別の法人での兼任は不可
建設業の専任技術者(または経営業務の管理責任者)と、宅建業の専任宅建士は、それぞれの法律で常勤性・専任性が求められています。そのため、別法人や別事務所にまたがる兼任は原則として認められません。
例外:同一法人・同一事務所なら兼任が認められるケースが多い
ここがポイントです。同一の法人が、同一の事務所内で建設業と宅建業を行う場合には、建設業の専任技術者と宅建業の専任宅建士の兼任が認められるケースが多いのが実務上の取り扱いです。
たとえば大阪府の解釈では、「同一法人・同一場所(同一建物)で勤務する場合に限り、勤務実態・業務量を斟酌して常勤性・専任性に問題がないと判断できるときは兼務を認めることがある」とされています。東京都・神奈川県・埼玉県などでも、同一事務所であれば建設業の経営業務管理責任者・専任技術者と、宅建業の代表者・政令使用人・専任宅建士の兼任を認める運用が一般的です。
ただし、
- マンション管理業の専任管理業務主任者との兼任 → ❌ 不可
- 別の事務所での専任ポジションとの兼任 → ❌ 不可
- 他社の常勤役員との兼任 → ❌ 不可
など、認められないパターンもあります。取扱いは都道府県により微妙に異なるため、申請前に必ず免許行政庁または専門家への確認が必要です。
申請書類の準備と提出

宅建業免許の申請には多数の書類が必要です。建設業者であっても、宅建業免許は別途新規申請となります。
主な必要書類
- 免許申請書(様式第1号)
- 法人の履歴事項全部証明書
- 役員・政令使用人・専任宅建士の身分証明書、登記されていないことの証明書
- 専任宅建士の宅建士証の写し、誓約書、雇用契約書または役員就任承諾書
- 事務所の使用権原を示す書類(賃貸借契約書・使用承諾書など)
- 事務所の写真台紙(外観・内部・標識)
- 略歴書、宅建業に従事する者の名簿
- 法人の決算書類、納税証明書 など
申請先は、
- 事務所が1都道府県内のみ → 都道府県知事免許
- 事務所が2都道府県以上 → 国土交通大臣免許
審査期間は通常約4〜6週間。保証協会への加入手続きを含めると、申請から営業開始まで45日〜2か月程度を見込みます。
🔗 関連記事: ・宅建免許申請の流れと書類準備:完全ガイド ・「国土交通大臣免許」と「都道府県知事免許」の取得方法とその違い
営業保証金または保証協会への加入
宅建業を開始する前に、消費者保護の観点から、営業保証金の供託または保証協会への加入が必須です。
| 項目 | 営業保証金(法務局供託) | 保証協会加入の場合 |
|---|---|---|
| 本店分 | 1,000万円 | 弁済業務保証金分担金 60万円 |
| 支店分(1店舗あたり) | 500万円 | 30万円 |
| その他 | — | 入会金・年会費等が別途必要 |
| 総額目安 | 1,000万円〜 | 約150万〜180万円(東京の場合) |
営業保証金は、免許通知を受けた日から3か月以内に供託しなければなりません。期限を過ぎると免許が取り消される場合があるため要注意です。
建設業者の多くは資金規模が大きく1,000万円供託も可能ですが、保証協会に加入したほうがキャッシュフロー面で圧倒的に有利です。さらに、保証協会の会員になれば、レインズ利用、各種研修、契約書ダウンロードなどの実務サポートも受けられます。
🔗 関連記事: ・宅建免許の営業保証金の供託に関して ・宅地建物取引業保証協会への加入は義務ではないが大多数の業者が加入する
建設業者が宅建業を兼業する際の3つの注意点
① 建設業法と宅建業法を別個に遵守する
兼業を始めると、
- 建設業の許可更新(5年ごと)、経営事項審査、技術者配置
- 宅建業の免許更新(5年ごと)、専任宅建士の維持、重要事項説明、37条書面交付、広告規制
など、両法に基づく義務を同時に履行する必要があります。事務所要件・広告規制・看板表示などは法律ごとに異なるため、コンプライアンス体制の整備が不可欠です。
② 事務所を同一にする場合のレイアウト設計
建設業の事務所内に宅建業の事務所を併設する場合、
- 執務スペースを明確に区分(パーテーション・受付・標識)
- 標識・宅地建物取引業者票・報酬額表の掲示
- 専任宅建士の常駐スペースを確保
など、宅建業の事務所要件を満たす設計が必要です。
③ 法定福利厚生・労務管理の整備
宅建業で新たに従業員を雇用する場合は、健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の手続きが必要です。同一法人内で兼業する場合は社会保険は一元的に処理できますが、就業規則や賃金規程など、宅建業の業務内容に応じた整備を行いましょう。
建設業者の宅建業免許申請は専門家へ依頼するのが安全
兼業ならではの論点(兼任ルール、事務所要件、書類整合性)は判断が難しく、独自解釈で申請すると差戻し・不受理のリスクが高くなります。
宅建業免許専門の行政書士に依頼すれば、
- 建設業許可と整合性のとれた書類作成
- 専任技術者と専任宅建士の兼任可否を都道府県別に確認
- 事務所要件の事前チェック(写真撮影含む)
- 保証協会加入手続きまでワンストップ対応
が可能です。経営者は本業(受注対応・現場管理)に集中でき、最短スケジュールで免許取得→営業開始へとつなげられます。
まとめ:建設業の強みを活かして、宅建業で新たな成長を
建設業者が宅建業を兼業することは、
- 事業領域の拡大と収益源の多様化
- 顧客資産・情報のシナジー効果
- 自社施工物件の自社販売による利益率向上
など、多くのメリットをもたらします。
ただし、
- 「専任」は常勤性+専従性(非常勤ではない)
- 同一法人・同一事務所での専任技術者と専任宅建士の兼任可否は都道府県判断
- 営業保証金は免許通知から3か月以内に供託
- 事務所要件・標識・広告規制を建設業と並行して遵守
といった実務ポイントを誤ると、免許取得が遅れたり、行政処分のリスクが生じます。事業計画の段階から専門家を交えて準備することが、スムーズな兼業スタートの最短ルートです。
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