会社の役員に外国人が含まれていても、宅建業免許の取得自体は十分に可能です。
重要なのは「外国人かどうか」ではなく、「宅建業法上の欠格事由に該当しないかどうか」と、そのことを証明するための書類を適切に揃えられるかどうかです。

  • 外国人役員がいる場合に特に問題となりやすいポイント
  • 日本在住・海外在住の場合の必要書類の違い
  • 誓約書の位置付けと作成の注意点
    を中心に分かりやすく解説します。

宅建業法の欠格事由は国籍を問わず共通

宅建業免許の審査では、「誰が役員になっているか」が細かく確認されます。
これは、日本人であっても外国人であっても同じで、宅建業法第5条に定められた欠格事由に該当していないかがチェックの中心です。

代表的な欠格事由としては、例えば次のようなものがあります。

  • 成年被後見人・被保佐人とみなされる者であること
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていないこと
  • 禁錮以上の刑など一定の刑罰を受け、一定期間が経過していないこと
  • 過去に宅建業の免許取消処分を受け、一定期間が経過していないこと
  • 暴力団員など反社会的勢力に該当すること

法人の場合、これらの欠格事由は「法人そのもの」だけでなく、「役員」や「政令で定める使用人」にも及びます。
したがって、役員の中に一人でも欠格事由に該当する人物がいると、その法人として宅建業免許を取得することはできません。

この点は、役員が日本人であっても外国人であっても同じ扱いです。
国籍によって審査基準が変わるわけではなく、あくまで「欠格事由に該当しないことをどうやって証明するか」の手段が変わるだけ、と理解しておくと整理しやすいでしょう。


日本人役員と外国人役員で異なるのは「証明書類」

宅建業免許申請では、役員全員について「欠格事由に該当しないこと」を示すための書類を提出します。
日本人役員の場合、一般的には次の2種類がセットで求められます。

  • 本籍地の市区町村が発行する「身分証明書」
  • 法務局が発行する「登記されていないことの証明書」

身分証明書には、破産や後見開始等の有無が記載されており、登記されていないことの証明書には成年後見・保佐等に関する情報が記載されています。
この2つで、宅建業法上の主要な欠格事由に該当しないことを、公的な証明書で確認するという構成です。

一方、外国人役員の場合、本籍地の概念が異なるため、日本人と同じ「身分証明書」を取得することができません。
その結果、「身分証明書」の代わりとなる書類を組み合わせて提出する必要があります。


日本在住の外国人役員がいる場合の必要書類

日本に住所を有する外国人役員がいる場合、一般的には次のような書類構成になります。

  • 登記されていないことの証明書(日本に住所がある場合)
  • 住民票の写し(国籍の記載があるもの)
  • 身分証明書に代わる誓約書

まず、「登記されていないことの証明書」については、日本の住所地を管轄する法務局で取得可能なケースが多く、日本人役員と同様に提出を求められるのが通常です。
これに加えて、住民票の写しを添付し、氏名・住所・国籍などの基本情報を確認します。
この際、マイナンバーは省略し、国籍が記載される形式で取得するのが一般的です。

そして、日本人が提出する身分証明書に代わるものとして、「誓約書」を提出する取扱いがなされています。
この誓約書が、日本人役員の身分証明書と同様の役割を果たすことになります。


海外在住の外国人役員がいる場合の必要書類

役員が海外に居住しており、日本に住民登録がない場合、状況は少し変わります。
日本に住所がなければ、住民票や登記されていないことの証明書を取得することができないため、別の形で欠格事由に該当しないことを説明・誓約していくことになります。

典型的には、次のような書類構成が想定されます。

  • パスポートのコピー(氏名・国籍・生年月日などが分かるページ)
  • 誓約書(欠格事由に該当しない旨を記載したもの)
  • 略歴書(必要とされる自治体も多い)

パスポートのコピーで本人確認と国籍等の基礎情報を示し、誓約書と略歴書で、欠格事由に該当しないことおよび経歴を説明するイメージです。
この場合、「登記されていないことの証明書」は原則として不要とする運用が多く見られますが、都道府県ごとに細かな取扱いが異なることがあるため、事前確認が欠かせません。

海外在住の役員の場合、誓約書や略歴書の原本を海外から取り寄せる必要があるため、郵送にかかる期間も含めてスケジュール管理が非常に重要になります。
申請直前に依頼すると、書類の到着が間に合わず、免許取得が大幅に遅れてしまうこともあるため注意が必要です。


「身分証明書に代わる誓約書」とは何か

外国人役員がいる場合によく問題になるのが、この「身分証明書に代わる誓約書」です。
日本人の身分証明書で確認できる事項を、自己の責任で書面により誓約してもらうための書類と考えるとイメージしやすいでしょう。

一般的な誓約書には、少なくとも次のような内容を盛り込みます。

  • 氏名、住所、国籍、生年月日などの基本情報
  • 成年被後見人・被保佐人とみなされる者ではないこと
  • 破産手続開始の決定を受けていない、または復権を得ていること
  • 禁錮以上の刑など一定の刑罰を受けていないこと
  • 暴力団員その他反社会的勢力に該当しないこと
  • 上記に虚偽があった場合の責任に関する記載 など

様式は各自治体やサポートする専門家によって多少異なりますが、「日本人の身分証明書でカバーしている情報を、誓約という形で補う」役割を果たす点は共通です。

また、海外在住の外国人役員の場合、母国語版と日本語版を用意し、それぞれに署名してもらう運用が採られることもあります。
いずれにせよ、誓約書は「形式だけあれば良い書類」ではなく、免許審査において欠格事由の有無を判断する重要な資料であるという意識を持って作成することが大切です。


都道府県ごとに異なる実務運用に注意

宅建業免許の窓口は、都道府県知事免許であれば各都道府県、国土交通大臣免許であれば主たる事務所を管轄する地方整備局等となります。
法律の枠組みは全国で共通ですが、実務上の運用や求められる書類の細部は、自治体によって微妙に異なることがあります。

例えば、次のような点で違いが出る可能性があります。

  • 住民票にどこまでの記載事項を求めるか
  • 誓約書の様式(自治体指定の書式の有無)
  • 海外在住役員の略歴書のフォーマットや記載水準
  • パスポートのコピーをどの範囲まで添付させるか など

そのため、外国人役員がいる会社で宅建業免許申請を行う場合には、
「一般的にはこうだろう」という想定で書類を揃えるのではなく、事前に申請先の窓口へ確認をしておくことが重要です。
事前相談の段階で役員構成を伝えることで、「このケースではこういう書類が必要です」という具体的な指示をもらえることも少なくありません。


実務上のスケジュール管理と注意点

外国人役員がいる場合、書類の取り寄せや署名・郵送に時間がかかることがよくあります。
特に海外在住の場合、国際郵便の遅延などもあり、想定より時間がかかることを前提に、ゆとりを持ったスケジュールを組むことが肝心です。

実務上、次のような点に注意して準備を進めると安心です。

  • 役員構成が固まった時点で、早めに必要書類の一覧を確認する
  • 海外在住役員がいる場合、誓約書・略歴書のひな形を早めに送付する
  • 日本在住の外国人役員については、住民票の取得方法や記載事項を事前に確認する
  • 誓約書の署名や日付の抜け、氏名の表記揺れ(ローマ字表記とのズレなど)に注意する
  • 行政書士等の専門家に依頼する場合は、外国人役員がいることを最初に伝えておく

こうした点を押さえておくことで、「書類はほぼ揃っているのに、一部の役員分だけで何度も補正が入る」といった事態を防ぐことができます。


まとめ:外国人役員だからといって過度に心配する必要はない

役員に外国人がいる場合の宅建業免許申請は、確かに日本人のみの会社に比べると必要書類がやや複雑になります。
しかし、押さえるべきポイントは次の2つに集約されます。

  • 宅建業法の欠格事由は国籍に関係なく一律に適用されること
  • 日本人の「身分証明書」でカバーしている内容を、住民票やパスポート、誓約書、略歴書などの組み合わせでしっかり説明すること

この2点を踏まえて書類を整えれば、「役員に外国人がいるから免許が取れない」ということは通常ありません。
むしろ、早い段階から必要書類とスケジュールを意識し、申請先の自治体や専門家と相談しながら準備を進めることで、スムーズな免許取得が十分に可能です。