宅建業の免許取得・維持には様々なルールが存在します。特に、宅建業以外に別の会社を経営する場合、事務所の独立性や専任宅建士の兼務など、注意すべき点が多数存在します。この記事では、不動産会社を複数経営する際の事務所の共有、専任宅建士の兼業、政令使用人の選任など、宅建業法上の注意点について詳しく解説します。

専任の宅地建物士が副業を始めるために知っておくべきポイントと最新情報

事務所の独立性とは?

物理的な独立性の確保

宅建業を行う事務所は、他の会社や部門と明確に区別されている必要があります。 間仕切りや専用の出入口を設けるなど、物理的な独立性を確保することが重要です。これは、顧客が安心して取引できる環境を提供し、企業の信頼性を高めるために不可欠です。
物理的な独立性は、単にスペースを区切るだけでなく、業務の透明性を確保する意味でも重要です。

例えば、他の事業の従業員が宅建業の顧客情報にアクセスできないようにする必要があります。また、事務所内での動線も考慮し、顧客が他の事業のエリアを通らずに宅建業の窓口にアクセスできるようにすることが望ましいです。物理的な独立性を確保することで、顧客は安心して相談や契約を行うことができ、宅建業者としての信頼性を高めることにつながります。さらに、従業員も集中して業務に取り組むことができ、生産性の向上にもつながります。
物理的な独立性の確保は、宅建業を健全に運営するための基礎となる重要な要素です。間仕切りの設置や専用出入口の設置には費用がかかる場合がありますが、長期的な視点で見れば、それ以上の価値があると言えるでしょう。

看板・表示の明確化

事務所の入り口や内部には、宅建業者であること、会社名、免許番号などを明示する必要があります。 これにより、顧客が安心して取引できる環境を提供します。
看板や表示は、顧客が最初に目にするものであり、企業の第一印象を大きく左右します。 したがって、見やすく、分かりやすいデザインにする必要があります。また、看板や表示には、宅建業法に基づく必要な情報を正確に記載する必要があります。

具体的には、宅地建物取引業者である旨、商号または名称、免許証番号、代表者の氏名(法人の場合)、業務時間、取り扱う業務の種類などを表示する必要があります。これらの情報を明確に表示することで、顧客は安心して取引を行うことができます。さらに、看板や表示は、定期的にメンテナンスを行い、常に清潔な状態を保つように心がけましょう。古くなったり、汚れたりした看板や表示は、企業のイメージを損なう可能性があります。

看板や表示は、企業の顔となる重要な要素であることを認識し、適切な管理を行いましょう。 明確な表示は、顧客だけでなく、従業員にとっても安心感を与えるとともに、企業のコンプライアンス意識の高さをアピールすることにもつながります。

書類・帳簿の保管

宅建業に関する書類や帳簿は、他の事業のものと混同しないように、適切に保管・管理する必要があります。電子データで管理する場合も、アクセス制限などを設けて、情報漏洩のリスクを低減することが重要です。書類や帳簿の保管は、宅建業法で義務付けられており、適切な管理を怠ると、行政処分の対象となる可能性があります。

具体的には、取引台帳、契約書、重要事項説明書、領収書などの書類を、一定期間保管する必要があります。これらの書類は、税務調査や監査の際にも必要となるため、適切に整理・保管しておくことが重要です。電子データで管理する場合は、パスワードの設定やアクセス権限の管理を徹底し、情報漏洩のリスクを低減する必要があります。また、定期的にバックアップを行い、データの消失を防ぐことも重要です。書類や帳簿の保管場所は、火災や水害などの災害に強い場所を選び、万が一の事態に備えるようにしましょう。書類や帳簿の適切な保管・管理は、企業のコンプライアンス体制を強化し、 顧客からの信頼を得るためにも不可欠な要素です。適切な管理体制を構築し、従業員への教育を徹底することで、 情報漏洩のリスクを低減し、安心して事業を継続することができます。

専任宅建士の兼業に関する注意点

専任宅建士の常勤性

専任宅建士は、原則としてその事務所に常勤している必要があります。他の会社や事業との兼務は、業務に支障をきたす可能性があるため、認められません。

専任宅建士は、宅建業法に基づき、事務所に常勤して、重要事項の説明や契約書への記名・押印など、専門的な業務を行うことが求められています。したがって、他の会社や事業との兼務は、これらの業務に支障をきたす可能性があるため、原則として認められません。常勤性とは、原則として、その事務所の所定労働時間中は、継続して業務に従事していることを意味します。ただし、休憩時間や出張など、一時的に事務所を離れることは、常勤性を損なうものではありません。

専任宅建士の常勤性は、顧客保護のために重要な要件であり、違反した場合は、行政処分の対象となる可能性があります。 宅建業者としては、専任宅建士の常勤性を確保するために、適切な勤務体制を整備し、兼務を希望する場合は、事前に監督官庁に相談するなど、慎重な対応が求められます。

専任宅建士の兼業に関する具体的な注意点

専任宅建士は、宅建業を営む会社に専従していることが求められるため、別の会社で勤務したり、その会社の代表者を務めたりすることは原則として認められません。もし、あなたが宅建業者の社長で専任宅建士も兼務している場合、あるいは別の会社の社長が新たに宅建業者の専任宅建士となることを検討している場合は、以下のいずれかの対応が必要です。

事例と対応策:

  • 宅建業者の社長が専任宅建士を務めており、自身が代表を務める別法人を設立したい場合
    • 宅建業者の専任宅建士を別の方に変更する必要があります。
    • または、設立予定の別法人の代表者を別の方にお願いする必要があります。
  • コンサルティング業を営む会社の社長が、自身を代表者兼専任宅建士とする宅建業者を設立したい場合
    • 設立予定の宅建業者の専任宅建士を別の方にお願いする必要があります。
    • または、コンサルティング業の会社の代表者を別の方に変更する必要があります。

重要なポイント:

「専任宅建士」と「別会社の社長」を兼任する状態は、宅建業免許の要件を満たしません。このため、必ずどちらかの役職を別の方に交代する必要があります。

なお、代表者自身が複数の会社を兼任すること自体は問題ありません。専任宅建士の要件を満たさない形で、宅建業の会社を含め複数の会社の代表を務めている方もいらっしゃいます。

事務所を共有する場合の注意点

明確な区分けの必要性

複数の宅建業者が同一のフロアや建物で事務所を共有する場合、それぞれの事務所が明確に区分けされている必要があります。パーテーションや衝立などで区切り、顧客が誤認しないように配慮が必要です。

事務所の共有は、初期費用や賃料を抑えることができるため、起業したばかりの宅建業者にとっては魅力的な選択肢となります。 しかし、事務所を共有する場合は、顧客が誤認しないように、それぞれの事務所が明確に区分けされている必要があります。 明確な区分けとは、例えば、パーテーションや衝立などで区切る、それぞれの事務所の入り口を別にする、それぞれの事務所の看板を設置するなど、 顧客が容易に区別できるような措置を講じることを意味します。また、事務所内での動線も考慮し、顧客が他の業者のエリアを通らずに、 目的の業者の窓口にアクセスできるようにすることが望ましいです。明確な区分けは、顧客だけでなく、従業員にとっても重要です。 それぞれの業者の従業員が、他の業者の顧客情報にアクセスできないように、セキュリティ対策を講じる必要があります。

事務所の共有は、費用を抑えることができる一方で、 顧客の誤認や情報漏洩のリスクがあるため、慎重な検討が必要です。事務所を共有する場合は、事前に専門家(行政書士、弁護士など)に相談し、 適切なアドバイスを受けることをお勧めします。

共有スペースの利用

受付や会議室などの共有スペースを利用する場合は、使用ルールを明確にし、他の業者との間でトラブルが発生しないように注意が必要です。共有スペースは、複数の業者が共同で使用するため、 使用ルールを明確にしておくことが重要です。
共有スペースの利用は、費用を抑えることができる一方で、 使用ルールの遵守や清掃などの手間がかかるため、 慎重な検討が必要です。共有スペースを利用する場合は、事前に他の業者と十分に協議し、 使用ルールを明確にしておくことをお勧めします。

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郵便物・電話の対応

郵便物や電話の対応は、それぞれの会社名で明確に行う必要があります。 顧客からの問い合わせにスムーズに対応できるように、担当者を明確にしておくことが重要です。郵便物や電話は、顧客とのコミュニケーションの重要な手段です。 したがって、それぞれの会社名で明確に対応する必要があります。郵便物には、必ず会社名を明記し、誤配を防ぐようにしましょう。
また、電話に出る際には、会社名を名乗り、顧客からの問い合わせに丁寧に対応するように心がけましょう。 顧客からの問い合わせにスムーズに対応できるように、 担当者を明確にしておくことが重要です。担当者が不在の場合は、伝言を受け付け、速やかに担当者に伝えるようにしましょう。 また、よくある質問については、FAQを作成し、顧客が自分で解決できるようにすることも有効です。 郵便物や電話の対応は、企業のイメージを左右する要素の一つです。 常に丁寧で迅速な対応を心がけましょう。郵便物や電話の対応は、手間がかかる一方で、 顧客との信頼関係を築く上で非常に重要です。 常に丁寧な対応を心がけ、顧客満足度を高めるように努めましょう。

政令使用人の選任について

政令使用人の役割

複数の事務所がある場合、各事務所に宅建業法で定められた要件を満たす政令使用人を設置する必要があります。政令使用人は、契約締結などの重要な業務を行う責任者となります。

政令使用人とは、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という)で定められた、宅地建物取引業者の事務所に置くべき使用人のことです。 宅建業法では、宅地建物取引業者は、事務所ごとに、一定の要件を満たす政令使用人を設置することが義務付けられています。 政令使用人の主な役割は、以下のとおりです。

1. 宅地建物取引業に関する業務の統括
2.従業員の指導・監督
3. 契約締結などの重要な業務の執行 政令使用人は、宅建業に関する業務を統括し、 従業員を指導・監督する責任があります。また、契約締結などの重要な業務を執行する権限も持っています。

政令使用人は、宅建業者の事務所において、 重要な役割を担っていると言えるでしょう。政令使用人の選任は、宅建業法で義務付けられており、 違反した場合は、行政処分の対象となる可能性があります。 宅建業者としては、政令使用人の選任を適切に行い、法令遵守を徹底する必要があります。

政令使用人の要件

政令使用人になるためには、一定の実務経験や宅建士資格が必要です。また、成年被後見人や被保佐人でないことなど、欠格事由に該当しないことも条件となります。政令使用人になるためには、宅建業法で定められた要件を満たす必要があります。

主な要件は、以下のとおりです。
1. 宅地建物取引士資格を有すること
2.宅地建物取引業に関し、一定の実務経験を有すること
3. 成年被後見人または被保佐人でないこと
4. 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していること
5. 宅建業法に違反し、免許を取り消されてから5年を経過していることこれらの要件を満たす必要があります。

宅地建物取引士資格を有していることは、 政令使用人になるための必須条件です。また、宅地建物取引業に関し、一定の実務経験を有することも必要です。 実務経験の年数は、宅建業法で定められています。さらに、成年被後見人や被保佐人でないことなど、 欠格事由に該当しないことも条件となります。 政令使用人の要件は、宅建業法で厳格に定められており、これらの要件を満たさない者は、政令使用人になることはできません。 宅建業者としては、政令使用人の選任にあたり、 これらの要件を十分に確認する必要があります。

まとめ:宅建業と別会社経営は慎重な検討を

兼業・事務所共有の際は専門家へ相談を

宅建業と別会社の経営、事務所の共有、専任宅建士の兼業などは、法規制が複雑で、違反すると行政処分を受ける可能性があります。

専門家(行政書士、弁護士など)に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。
当事務所でも無料にてアドバイス可能です。

宅建業は、国民の生活に密接に関わる重要な事業であり、宅建業法をはじめとする様々な法律によって規制されています。 宅建業と別会社の経営、事務所の共有、専任宅建士の兼業などは、これらの法律に抵触する可能性があり、注意が必要です。

特に、専任宅建士の常勤性や事務所の独立性については、監督官庁の審査が厳しく、違反すると行政処分を受ける可能性があります。 これらの問題を解決するためには、専門家(行政書士、弁護士など)に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。 専門家は、宅建業法をはじめとする関連法規に精通しており、 個々の状況に応じて、適切なアドバイスを提供してくれます。また、行政機関との交渉や書類作成なども代行してくれるため、 時間や労力を節約することができます。宅建業と別会社の経営、事務所の共有、専任宅建士の兼業などを検討する場合は、 事前に専門家に相談し、法規制を遵守するように心がけましょう。