宅建業を営むためには、事務所に専任の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。この要件を満たさないと、宅建業免許を維持することができず、取引停止や免許失効のリスクが生じます。本記事では、専任の宅地建物取引士が退職や転職をした際の必要な手続きと注意点を詳しく解説します。

専任の宅建士の配置基準とは?
宅建業法では、事務所において宅建業に従事する者5名に1名以上の割合で専任の宅建士を配置する必要があります。この「5名」とは、代表者、営業担当者、事務スタッフなど、宅建業務に関与する全ての常勤者を指します。
- 例1:事務所に宅建業務従事者が5名の場合 → 専任の宅建士は1名必要
- 例2:事務所に宅建業務従事者が10名の場合 → 専任の宅建士は2名必要
注意点
事務所が複数ある場合、各事務所ごとに基準を満たす必要があります。例えば、本店と支店がある場合、本店と支店それぞれで専任の宅建士を配置しなければなりません。
専任の宅建士が退職した場合の手続き
専任の宅建士が退職し、基準を満たさなくなった場合、以下の手続きを速やかに行う必要があります。

1. 変更届の提出
- 提出書類:業者名簿登載事項変更届出書
- 提出期限:退職から2週間以内
退職した専任の宅建士の情報を速やかに届け出る必要があります。
2. 新しい専任の宅建士の配置
退職後2週間以内に、新たな専任の宅建士を配置するか、業務従事者の人数を減らして基準を満たすようにする必要があります。
- 対応策:
- 新たに専任の宅建士を採用する
- 代表者が宅建士資格を持っている場合は、専任の宅建士を兼任する
3. 手続きを怠った場合のリスク
2週間を超えて専任の宅建士が不足している状態が続くと、行政指導や処分の対象となる可能性があります。また、この状態で宅建業務を行うことは法律違反です。
転職する宅建士が行うべき手続き
宅建士自身も、転職や退職後には以下の手続きを行う必要があります。
1. 資格登録事項の変更
変更登録申請書を用いて、資格登録事項(従事先)の変更手続きを行います。
- 退職後すぐに転職する場合:新たな勤務先の情報を登録
- 宅建業以外の業種に転職する場合:従事先を空欄にして登録
2. 注意点
以前の勤務先が退職後の変更届を提出していない場合、新たな勤務先で専任の宅建士として登録できない可能性があります。この場合、以前の勤務先に変更届の提出を促す必要があります。
専任の宅建士が欠けた状態を放置した場合
もし専任の宅建士が不足した状態を放置した場合、以下のようなリスクが生じます。
- 宅建業免許の更新不可
専任の宅建士がいない期間があると、免許更新時に問題となる可能性があります。 - 行政処分のリスク
監督処分や勧告を受ける場合があり、その内容は行政のホームページで公開されます。 - 営業停止の可能性
専任の宅建士がいない状態での業務は法律違反となるため、営業停止の対象になります。
まとめ
専任の宅地建物取引士が退職または転職した場合、事業者側と宅建士側の双方で適切な手続きを行う必要があります。
- 事業者側:2週間以内に変更届を提出し、新たな専任の宅建士を配置する。
- 宅建士側:資格登録事項の変更を申請する。
手続きの遅れや放置は、宅建業免許の失効や行政処分につながる可能性があるため、早急な対応が重要です。
もし専任の宅建士の配置や変更手続きについて不明な点がある場合は、ぜひ当事務所までご相談ください。専門知識を活かして、スムーズな手続き完了をサポートいたします。
