地方に本店を置いたまま、東京のレンタルオフィスを「支店(従たる事務所)」として宅建業免許を取得・拡張することは可能です。
ただし、レンタルオフィスの形態や契約内容によっては事務所要件を満たさず、支店として認められないケースもあるため、事前チェックが非常に重要です。


東京支店で宅建免許を取るときの全体像

  • 地方本店側の免許種別・状況を確認(知事免許か/既に支店があるか)
  • 東京側で宅建業の事務所要件を満たすレンタルオフィスを契約
  • 本店がある都道府県と東京都の両方を跨ぐ場合は「大臣免許」への免許換えを検討
  • 専任宅建士・政令使用人など人的要件を各事務所ごとに整備
  • 東京都への支店設置(従たる事務所)申請・審査を経て営業開始
    この一連の流れを意識しておくと、支店オープンまでのスケジュールが組みやすくなります。

レンタルオフィス選びで絶対に外せないポイント

1. 完全個室・独立性があるか

宅建業の事務所として認められるには、他社と机が並ぶだけのオープンスペースではなく、「鍵付きの専用個室」であることが原則です。
間仕切りのないフリーアドレス型や時間貸しブース、サテライトオフィスのみの契約では、東京都では事務所として不適合と判断されることが多くなっています。

2. 継続的に占有利用できる契約になっているか

月単位のマンスリーオフィスや短期利用が前提で、いつでも解約・移動前提の契約は「継続的な業務の場所」と見なされないおそれがあります。
賃貸借契約書・利用規約を確認し、「事務所利用」「法人登記可」「不動産業可」「24時間(又は通常営業時間帯)専有利用」などの条件を事前に押さえておくことが大切です。

3. 法人登記・表示・設備が整えられるか

東京支店として宅建業を営む以上、登記上も支店所在地として登録し、オフィス内に以下を整備する必要があります。

  • 商号(社名)表示・表札
  • 宅建業免許証番号の表示(免許票)
  • 報酬額表の掲示
  • 帳簿・書類保管(紙・電子いずれも可だが管理場所が明確であること)
  • 固定電話・連絡手段(実務上はIP電話でも運用されている)

また、レンタルオフィスの会議室やラウンジを「重要事項説明・契約締結の場」として利用できるか、運営ルールや規約も確認しておきましょう。


支店としての人的要件(専任宅建士・政令使用人)

1. 支店ごとの専任宅建士配置

宅建業の事務所ごとに、従業者5名につき少なくとも1名の専任宅建士を配置する必要があります。
東京支店にも専任宅建士を置き、その専任宅建士が「常勤(通える距離・勤務時間)」「専従(他のフルタイム勤務と兼務しない)」であることを示せる体制が求められます。

地方本店の専任宅建士と東京支店の専任宅建士を同一人物で兼ねることは、勤務実態上ほぼ認められません。
通勤時間・週あたりの勤務日数なども含め、実際に常駐できる人員配置を設計することがポイントです。

2. 支店の「政令使用人」を置くこと

支店には、契約締結や業務統括の責任者として「政令使用人」を置き、免許申請書・届出に記載する必要があります。
東京支店に実質的な責任者が不在だと判断されると、審査で指摘を受ける可能性があるため、専任宅建士と併せて体制を固めておきましょう。


地方本店+東京支店のときの免許種別と「免許換え」

1. 知事免許か大臣免許かを必ず確認

宅建業の事務所が1つの都道府県内だけなら知事免許で足りますが、2つ以上の都道府県に事務所(本店・支店・従たる事務所)を置く場合は国土交通大臣免許が必要です。
地方本店が既に知事免許で営業しており、新たに東京都に支店を出して宅建業を行う場合、「大臣免許への免許換え」が必要になるのが一般的なパターンです。

2. 免許換えと支店設置のスケジュール感

免許換えには、現行免許の有効期間や営業状況を踏まえたスケジュール設計が欠かせません。
東京支店の事務所要件を整え、保証協会の支部変更・追加等も考慮しながら、申請から許可まで数か月程度の余裕を見込んでおくと安全です。


レンタルオフィス×東京支店でよくあるNGパターン

  • 「コワーキング席のみ契約」「バーチャルオフィスのみ」で登記はできるが、事務所要件・専任宅建士常駐スペースを満たしていない。
  • 利用規約に「不動産仲介業不可」「一時利用のみ」等の制限があり、審査で不適合となる。
  • 地方本店側の専任宅建士数や政令使用人を変更したのに、届出や大臣免許換え、保証協会の手続きを連動させておらず、支店オープンが大幅に遅れる。

まとめ:東京支店開設をスムーズに進めるために

地方本店から東京支店を出す場合、「レンタルオフィスの事務所要件」「支店ごとの専任宅建士・政令使用人」「知事免許から大臣免許への切替」という3点を同時に設計することが成功のカギになります。
東京で具体的なレンタルオフィス候補(物件名・プラン)が決まっていれば、契約前に図面・写真・契約書案を前提に事務所要件をチェックするのでYAS行政書士事務所にご相談ください。レンタルオフィスの紹介、支店設置・免許換えまで無駄なくアドバイスさせていただきます。