宅建取引士が出向する場合、常勤性や専任性が問題となることがあります。この記事では、専任の宅建取引士とは何か、常勤性・専任性の要件、そして専取との違いについて詳しく解説します。不動産取引における宅建取引士の役割と責任を理解し、適切な人員配置を行うために、ぜひ参考にしてください。
専任宅建取引士の常勤性・専任性とは

専任性の定義と重要性
専任性とは、宅地建物取引業者が事務所に置くべき宅建取引士が、その事務所に専属して業務を行うことを指します。これは、顧客の保護と不動産取引の公正さを確保するために非常に重要な要件です。具体的には、宅建取引士は、その事務所において、宅地建物取引業法に定められた業務(重要事項の説明、契約書への記名・押印など)に専念する必要があります。他の事業に従事したり、他の事務所との兼務をしたりすることは、原則として認められません。
専任性が重要な理由は、専門的な知識と経験を持つ宅建取引士が、常に顧客の立場に立って適切なアドバイスを提供できるようにするためです。不動産取引は、一般的に高額な取引であり、専門的な知識がないと、顧客が不利益を被る可能性があります。専任の宅建取引士がいることで、顧客は安心して取引を進めることができます。また、専任性は、不動産取引の透明性を高め、不正行為を防止する役割も果たします。専任の宅建取引士は、取引の過程を監視し、法令違反がないかをチェックする責任があります。
さらに、専任性は、宅地建物取引業者の信頼性を高めることにもつながります。専任の宅建取引士を配置していることは、その業者が法令を遵守し、顧客の利益を最優先に考えていることの証となります。したがって、宅地建物取引業者は、専任の宅建取引士を適切に配置し、その役割と責任を十分に理解させることが重要です。専任性の確保は、不動産業界全体の健全な発展にも不可欠な要素と言えるでしょう。
常勤性の定義と必要条件
常勤性とは、宅建取引士が通常の勤務時間中、継続的にその事務所に勤務している状態を指します。社会保険加入状況や給与体系などが判断材料となります。兼業や出向など、常勤性を損なう行為は認められません。常勤性は、宅建取引士がその事務所において、必要な時にいつでも業務に対応できる状態であることを保証するために設けられています。
常勤性の必要条件としては、まず、宅建取引士がその事務所の従業員として雇用されていることが挙げられます。雇用契約に基づき、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)に加入していることが望ましいです。また、給与がその事務所から支払われていることも重要なポイントです。給与明細や源泉徴収票などが、常勤性を証明する資料となります。
さらに、勤務時間も常勤性を判断する上で重要な要素です。宅建取引士は、原則として、その事務所の通常の勤務時間中、継続的に勤務している必要があります。例えば、週に数時間しか勤務しない場合や、他の事業と兼業している場合は、常勤性があると認められない可能性があります。事務所の就業規則や勤務シフト表なども、常勤性を証明する資料として活用できます。
常勤性は、宅建取引士がその事務所において、責任を持って業務を遂行するために不可欠な要件です。宅地建物取引業者は、常勤の宅建取引士を適切に配置し、その勤務状況を管理することが重要です。
専任性と常勤性の確認方法
専任性と常勤性の確認は、事務所への訪問調査や書類審査によって行われます。必要に応じて、宅建取引士本人へのヒアリングも実施されます。虚偽の申告は、宅地建物取引業法違反となる可能性があります。具体的には、都道府県知事や国土交通大臣などの行政庁が、宅地建物取引業者の事務所に立ち入り、宅建取引士の勤務状況や雇用状況などを調査します。
書類審査では、宅建取引士の資格証、雇用契約書、社会保険の加入状況を示す書類、給与明細、勤務シフト表などが確認されます。これらの書類を通じて、宅建取引士がその事務所に専属して勤務しているか、通常の勤務時間中、継続的に勤務しているかなどが判断されます。
訪問調査では、宅建取引士本人へのヒアリングが行われることがあります。ヒアリングでは、勤務時間、業務内容、他の事業との兼業の有無などについて質問されます。宅建取引士は、事実に基づき、正確に回答する必要があります。
専任性と常勤性の要件を満たしていない場合、行政庁から是正指導や業務改善命令が出されることがあります。また、悪質な場合には、業務停止処分や免許取消処分などの厳しい処分が下されることもあります。宅地建物取引業者は、専任性と常勤性の要件を遵守し、法令違反がないように注意する必要があります。
虚偽の申告は、宅地建物取引業法違反となり、刑事罰の対象となる可能性もあります。宅地建物取引業者は、専任性と常勤性に関する情報を正確に申告する義務があります。
宅建取引士の出向と常勤性

出向が常勤性に与える影響
宅建取引士が出向した場合、原則として出向先の事務所に常勤している必要があります。出向元と出向先で兼務することは、常勤性の要件を満たさないと判断される可能性が高いです。出向とは、企業が従業員を別の企業(子会社や関連会社など)に出向させ、一定期間、その企業の業務に従事させることを指します。宅建取引士が出向する場合、その出向が常勤性にどのような影響を与えるかが問題となります。
原則として、宅建取引士は、その事務所に常勤している必要があります。これは、宅建取引士が顧客に対して適切なアドバイスを提供し、不動産取引の公正さを確保するために重要な要件です。したがって、宅建取引士が出向した場合、出向先の事務所に常勤している必要があります。
出向元と出向先で兼務することは、常勤性の要件を満たさないと判断される可能性が高いです。なぜなら、兼務することで、宅建取引士がそれぞれの事務所において、十分な時間を確保できなくなる可能性があるからです。また、兼務することで、宅建取引士の責任が分散され、顧客に対する責任を十分に果たすことができなくなる可能性もあります。
ただし、例外的に、出向元と出向先の業務内容が密接に関連しており、実質的に同一の業務を行っていると認められる場合は、常勤性が認められることがあります。しかし、これは非常に限定的なケースであり、事前に管轄の行政庁に確認する必要があります。
出向時の注意点と対策
出向させる場合は、事前に管轄の行政庁に相談し、常勤性に関する確認を取ることが重要です。また、出向契約の内容や勤務時間などを明確にし、常勤性を証明できる書類を準備しておく必要があります。出向は、宅建取引士の常勤性に影響を与える可能性があるため、慎重に対応する必要があります。
まず、出向させる前に、必ず管轄の行政庁(都道府県知事や国土交通大臣)に相談し、出向が常勤性の要件を満たすかどうかを確認することが重要です。行政庁は、出向契約の内容や勤務時間などを確認し、常勤性に関する判断を行います。行政庁の判断を仰ぐことで、後々のトラブルを避けることができます。
次に、出向契約の内容を明確にすることが重要です。出向契約には、出向期間、勤務時間、業務内容、給与の支払い方法などを明記する必要があります。特に、勤務時間については、出向先の事務所において、通常の勤務時間中、継続的に勤務していることを明確にする必要があります。
さらに、常勤性を証明できる書類を準備しておく必要があります。例えば、出向契約書、勤務シフト表、給与明細、社会保険の加入状況を示す書類などが挙げられます。これらの書類を準備しておくことで、行政庁の調査があった場合に、速やかに対応することができます。
出向は、宅建取引士のキャリアアップや企業の成長に貢献する可能性があります。しかし、常勤性の要件を満たさない場合、行政処分を受ける可能性もあります。したがって、出向させる際には、慎重に対応し、法令を遵守することが重要です。
出向に関する例外規定
ごく稀なケースですが、出向元と出向先の業務内容が密接に関連しており、実質的に同一の業務を行っていると認められる場合は、例外的に常勤性が認められることがあります。ただし、これは非常に限定的なケースです。この例外規定は、宅地建物取引業の特殊性を考慮して設けられています。
例えば、親会社と子会社が、共同で一つのプロジェクトに取り組んでおり、宅建取引士が出向という形で、そのプロジェクトに参加する場合などが考えられます。この場合、出向元と出向先の業務内容が密接に関連しており、実質的に同一の業務を行っていると認められる可能性があります。
ただし、この例外規定が適用されるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、出向元と出向先の業務内容が、客観的に見て密接に関連している必要があります。次に、宅建取引士が出向先で行う業務が、出向元で行っていた業務と実質的に同一である必要があります。さらに、出向期間が一時的なものであり、恒常的なものではない必要があります。
これらの条件をすべて満たしている場合でも、行政庁の判断によっては、常勤性が認められないことがあります。したがって、この例外規定を適用しようとする場合は、事前に必ず管轄の行政庁に相談し、確認を取ることが重要です。安易な判断は、法令違反につながる可能性があります。
専任宅建取引士の役割
専任宅建取引士は、宅地建物取引業法に基づき、重要事項の説明や契約書への記名・押印など、専門的な業務を行います。事務所に必ず1名以上配置する必要があります。専任宅建取引士は、不動産取引の専門家として、顧客の利益を保護し、公正な取引を促進する役割を担っています。
重要事項の説明は、宅地建物取引業法第35条に定められた重要な業務であり、宅建取引士の資格を持つ者しか行うことができません。重要事項説明書を作成し、物件に関する重要な情報を顧客に説明することで、顧客が十分な情報に基づいて判断できるようにします。
契約書への記名・押印も、宅建取引士の重要な業務の一つです。宅建取引士が契約書に記名・押印することで、契約内容の正確性を保証し、後々のトラブルを防止します。
専任宅建取引士は、事務所に必ず1名以上配置する必要があります。これは、宅地建物取引業法第31条の3に定められた義務であり、違反した場合は、行政処分を受ける可能性があります。専任宅建取引士は、事務所において、常に宅地建物取引業に関する業務に従事している必要があります。
専任宅建取引士は、不動産取引に関する専門的な知識と経験を持ち、顧客のニーズに合った適切なアドバイスを提供することが求められます。また、法令遵守の意識を持ち、公正な取引を心がける必要があります。
違反した場合の罰則

名義貸しのリスクと法的責任
宅建取引士が名義貸しを行った場合、宅地建物取引業法違反となり、業務停止処分や登録消除などの厳しい処分を受ける可能性があります。また、刑事責任を問われることもあります。名義貸しは、不動産取引の公正さを損ない、顧客に不利益をもたらす行為であり、断じて許されるものではありません。
宅地建物取引業法では、宅建取引士は、自らの名義を用いて誠実に業務を行うことが義務付けられています。名義貸しは、この義務に違反する行為であり、明確な違法行為です。
名義貸しを行った宅建取引士は、業務停止処分や登録消除などの行政処分を受ける可能性があります。業務停止処分とは、一定期間、宅建取引士としての業務を行うことができなくなる処分です。登録消除とは、宅建取引士の資格を失う処分であり、再登録も困難になります。
また、名義貸しは、刑事責任を問われる可能性もあります。宅地建物取引業法違反は、懲役刑や罰金刑の対象となる可能性があります。名義を借りた者だけでなく、名義を貸した宅建取引士も、共犯として処罰される可能性があります。
名義貸しは、不動産取引の安全性を損ない、顧客に大きな損害を与える可能性があります。例えば、名義を借りた者が、専門知識や経験を持たない場合、不適切な取引を行い、顧客に損失を与える可能性があります。また、名義貸しは、不正な資金洗浄や脱税などの犯罪行為に利用される可能性もあります。
名義貸しは、宅建取引士としての倫理に反する行為であり、絶対に避けるべきです。
行政処分の事例
過去には、常勤性を満たさない宅建取引士を専任として届け出ていた事例や、名義貸しを行っていた事例などが発覚し、行政処分が下されています。これらの事例から、法令遵守の重要性を学ぶことができます。行政処分は、宅地建物取引業法に違反した業者や宅建取引士に対して、都道府県知事や国土交通大臣が行う処分です。行政処分には、指示処分、業務停止処分、免許取消処分などがあります。
常勤性を満たさない宅建取引士を専任として届け出ていた事例では、宅地建物取引業者が、実際には他の会社で勤務している宅建取引士を、自社の専任宅建取引士として届け出ていました。これは、宅地建物取引業法に違反する行為であり、業務停止処分が下されました。
名義貸しを行っていた事例では、宅建取引士が、自分の名義を他の業者に貸し、その業者が宅地建物取引業を行っていました。これは、宅地建物取引業法に違反する行為であり、免許取消処分が下されました。
これらの事例から、宅地建物取引業者や宅建取引士は、法令を遵守し、誠実に業務を行う必要があることがわかります。法令違反は、行政処分を受けるだけでなく、社会的信用を失うことにもつながります。宅地建物取引業者や宅建取引士は、常に法令遵守の意識を持ち、業務に取り組む必要があります。
違反を防ぐための対策
定期的なコンプライアンス研修の実施や、社内監査体制の強化など、違反行為を未然に防ぐための対策を講じることが重要です。また、弁護士や行政書士などの専門家に相談することも有効です。SUN行政書士法人でも相談を承っております。コンプライアンス研修は、宅地建物取引業法や関連法規に関する知識を深め、法令遵守の意識を高めるために有効な手段です。
コンプライアンス研修では、宅地建物取引業法改正の動向や、過去の行政処分の事例などを学ぶことができます。また、具体的な事例を基に、法令遵守の重要性を理解することができます。コンプライアンス研修は、定期的に実施し、常に最新の情報を共有することが重要です。
社内監査体制の強化も、違反行為を未然に防ぐために重要な対策です。社内監査では、宅地建物取引業法や関連法規の遵守状況をチェックし、問題点があれば改善を促します。社内監査は、定期的に実施し、客観的な視点で行うことが重要です。
弁護士や行政書士などの専門家に相談することも有効です。専門家は、宅地建物取引業法や関連法規に関する知識や経験が豊富であり、適切なアドバイスを提供してくれます。また、契約書の作成や審査、紛争解決など、様々な場面でサポートを受けることができます。
まとめ:宅建取引士の常勤性・専任性を正しく理解しましょう
この記事では、宅建取引士の常勤性・専任性について詳しく解説しました。不動産取引における宅建取引士の役割と責任を理解し、適切な人員配置を行うことが、企業の信頼性を高める上で非常に重要です。東京都知事免許や国土交通大臣免許の申請に関するご相談も承っております。宅建取引士の常勤性・専任性は、宅地建物取引業法に定められた重要な要件であり、違反した場合は、行政処分を受ける可能性があります。
宅建取引士は、顧客に対して適切なアドバイスを提供し、不動産取引の公正さを確保する役割を担っています。そのため、宅建取引士は、常に最新の知識を習得し、業務に精通している必要があります。また、法令遵守の意識を持ち、誠実に業務を行う必要があります。
宅地建物取引業者は、宅建取引士を適切に配置し、その能力を最大限に活用することが重要です。宅建取引士のスキルアップを支援し、働きやすい環境を整備することで、企業の競争力を高めることができます。
不動産取引は、高額な取引であり、専門的な知識や経験が必要です。宅建取引士は、顧客のニーズを理解し、最適な提案を行うことで、顧客満足度を高めることができます。また、トラブルを未然に防ぎ、円滑な取引をサポートすることで、企業の信頼性を高めることができます。
東京都知事免許や国土交通大臣免許の申請に関するご相談も承っております。免許の取得や更新には、専門的な知識や手続きが必要であり、煩雑な作業を伴います。SUN行政書士法人では、免許申請に関するご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
